夫婦関係を良好にするコツとは

毎年4月14日は「家族や友人、職場の同僚など、日ごろお世話になっている人に感謝の気持ちを伝える日」として佐賀市が制定した「パートナーデー」。実は「子どもの可能性を伸ばす子育て」には「良好な夫婦関係」が欠かせないんです。今日はその理由と、今日から実践できる夫婦関係改善のためのちょっとした秘訣をお話ししますね。

 

子育てに「良好な夫婦関係」が欠かせない理由

子育てに使える!マズローの「欲求5段階説」

 米国の心理学者アブラハム・マズローは「人間は自己実現に向けて成長する」とし、人間の欲求を5段階に分けて理論化したことで知られています。「マズローの欲求5段階説」として有名なこの理論は、子育て中の親であれば知っておいても良い、とても重要な考え方を教えてくれます。

 

 マズローは以下のように説きました。

①人間の欲求は生命維持のための「生理の欲求」をはじめとする。

(食欲、睡眠欲等生きていく上で必要な機能を満たしたい欲求ですね。)

②①が満たされるとより良い環境で健康に安心して暮らすための「安全の欲求」を満たしたいと思う。

(雨風がしのげる暖かい家に住みたい、誰かに攻撃されるのではないかと怯えることなく暮らしたい等「身を守るための欲求」です。)

③①②が満たされると「役に立ちたい」「人に受け入れられていると感じたい」と願うより高いレベルの「社会的欲求と愛の欲求」を満たしたいと思う。

(誰かとつながっていたい、誰かに必要とされたい欲求で「所属と愛の欲求」とも言われます。)

④それが満たされると「人から価値があると評価されたい」「自分は価値がある人間だと思いたい」と願う「承認の欲求」を満たしたいと思う。

(自信を持ち、行動するためにとても必要な欲求です。心のガソリンですね。)

⑤4つの欲求全てが満たされると「こんな自分になりたい」「自分の能力をつかって創造的な活動をしたい」と願う「自己実現の欲求」を満たしたいと思う。

(これが私たち親が子どもに最終的にたどりついてほしいと願うステージですね。)

 

こうやって階段を登っていくように、人は自己実現に向けて成長していくと言われています。

 

 

子どもの「安全の欲求」は夫婦喧嘩に影響を受ける!

あなたのご家庭では夫婦喧嘩は多い方でしょうか。

・顔を合わせる度に夫婦で言い合いをしている

・子どもには見せないようにしているけれど夫婦喧嘩は絶えない

・話したくなくてパートナーを無視している

・子どもの前でパートナーの悪口を言っている

もし一つでも当てはまるところがあれば注意が必要です。

 

つい感情的になってしまう夫婦喧嘩は、「対話」とはいいがたいですよね。

相手の行動・発言・能力・性格・容姿等への「口撃」が始まると、相手も自分を守ろうとあなたを「口撃」してきます。

「あなたはいつも口ばっかり!」「お前だってそうじゃないか!」

「どうして家の中のことはやらないの?!」「俺だって手伝ってるよ!」

「私ばっかり大変じゃない!」「仕事の方が大変なんだよ!」

 

 ここで思い出していただきたいのは、人が自己実現に向けて「段階的に成長していく」ということ。

つまり先に述べた「安全の欲求」が満たされていないのに、いきなり「自己実現の欲求」を満たそうと創造的な活動をするのはとても難しいと言えます。

攻撃されない、脅かされない、「身も心も」安全に、安心して暮らせる状態にあって初めて「人とのつながり」を大切にでき、「人を大切にし人に大切にされる自分に価値があると思える」から、「もっと良い自分になろう」と努力できるのです。

 子どもに対しての「攻撃」ではないから問題ないのでは?とお思いになるかもしれません。ですが、目の前で毎日自分の両親が攻撃しあう姿を見続けたら、「心の安全」は確保されそうでしょうか。答えはNOですよね。

 

 

夫婦喧嘩を見聞きし続けると子どもの脳が委縮する

 この衝撃的な研究結果は福井大学とハーバード大学がアメリカ人を対象に行った調査で明らかにされたものです。日常的に両親の暴力・暴言を見聞きしてきた子どもたちは脳の視覚野の一部が萎縮しており、さらに暴力よりも暴言にさらされていた子どもの方が脳の萎縮率が高かったそうなのです。委縮した視覚野の一部は単語の認知に関係しているそうで、学力の低下やコミュニケーション能力の低下の危険性を専門家は指摘しています。

 

子どもは自分を責めてしまう

 では暴力や暴言ではない「無視」の場合はどうでしょうか。いわゆる「冷戦状態」ですが、この場合も先ほどの「安全の欲求」は満たされないですよね。例えばご自分の職場で部長と課長が「冷戦状態」だったらあなたはどんな風に感じ、どんな風に毎日を過ごすでしょうか。課長の前で部長と話すのも気を遣う、部長の前で課長と話すのも気を遣う、常に二人の様子を伺い、なるべく波風を立てないように気を配る。そんな毎日を送っていたら心はすっかり疲れてしまいます。

 子どもの場合は「自分が頑張れば両親が仲良くなるんじゃないか」あるいは「自分のせいで両親の仲が悪いのではないか」と両親の不仲を「自分の責任」ととらえてしまうことがあります。その場合、うまく行けばいいのでしょうが、自分が何をしても不仲が改善しないと「うまくできない自分が悪いんだ」と自己否定をしてしまう危険があります。これでは自己実現とは程遠い状態ですよね。

 

夫婦喧嘩は子育てに百害あって一利なし

今見てきただけでも、子育てにおいて「冷戦状態」も含めた夫婦喧嘩が悪影響を及ぼすことがお分かりいただけたと思います。では、どうやってこじれてしまった夫婦関係を改善させればよいのでしょうか。

 

 

大切なのは「決意すること」

「期待しない」「諦める」のが解決策?

夫婦関係を長続きさせるコツとして「相手に期待しない」「諦める」という意見があります。

ブライダル総研の最新の「夫婦関係調査」で「現在の関係に不満はあるが、変えたいとは思わない/あきらめている」のは、夫(12.3%)よりも妻(18.1%)の方が多く、年代があがるにつれ上昇していくという結果があります。最も改善意欲が強いのが30代妻で女性は40代以降「現状維持」や「あきらめ」傾向が高まるそうですから、むしろ「子どもがまだ小さいうち」の方が夫・妻ともに夫婦関係を改善させるチャンスと言えるでしょう。「子どものため」という大義名分があれば努力できます。一番不幸なシナリオは改善のタイミングを逃してしまい、「諦め」と「惰性」で何十年も「我慢」しながら過ごすこと。たった一度しかない人生をそんな風に過ごしていくのはあまり幸せとは言えないですよね。

 

大切なのは「決意」と「行動」

 夫婦関係改善のためのノウハウはいたるところに溢れています。今はネットで簡単に情報を入手できる時代ですから「こうやるといいですよ!」というテクニックを身に付けることは容易でしょう。

ですが、それでは足りないのです。

 テクニックを身に付けたところで「モチベーション」を維持できないと、そもそも「続けること」ができません。本で読んだことを一回やってみて何となく良かったけれど、でも続かない…それでは抜本的な解決にはならないのです。

 では「モチベーション」は何から来るのか。それは「やる理由」です。

「子どものために家庭環境を良くしたい」

「自分が気持ちよく過ごしたい」

「取り返しがつかなくなるのだけは避けたい」

理由は何でも構いません。あなたが「夫婦関係を改善させたい!」と思うに至った「やる理由」を書き出してみてください。そしてその理由をしっかりと目に焼き付けて「やる」と決意すること。それからテクニックをまずは1つ「実践する」この順番が大切です。

 やっている間に「何だか面倒くさくなってきたな…」と思ったら、もう一度ご自分が書いた「やる理由」を見てください。そしてもう一度決意し、決めたことを実践する。その地道な繰り返しによって、はじめて現実が変わり始めます。

 

今すぐできる「ありがとう」の先出し

その上で今すぐ実践できるテクニックを一つお話しします。

それは先に「ありがとう」を言うこと。

近しい存在であればあるほど「ありがとう」を出し惜しみしたり、後出ししがちです。

「自分の方が頑張っているからあっちが先に感謝すべきだ」

「相手が言ってくれないのに自分が先に言うのは何だか癪」

「今さら『ありがとう』なんて言う必要ない」

そんな気持ちがブレーキをかけてなかなか「ありがとう」が言えていないのではないでしょうか。

「ありがとう」は言われた人だけでなく、言った人も幸せな気持ちにする魔法の言葉です。どうしてもブレーキがかかって言いづらいのであれば「自分のため、自分のため」と自分に言い聞かせ、気持ちが伴っていなくてもいいのでまずは「言うだけ」言ってみてください。慣れてくると意外と簡単に言えるようになります。

そうすると「やってもらったことはお返ししたい」という人の心理に従って、相手も「ありがとう」を言ってくれる機会が増えるかもしれませんよ。

 

相手が変わるのを待たないこと

 夫婦関係だけでなくすべての人間関係もそうですが、相手が変わるのただ待っているのは「鏡を見ているだけで鏡の中の自分の寝ぐせが直るのを待っている」のと同じ状態です。寝ぐせを直したければ鏡の中の自分の頭ではなく、自分の頭を触って直しますよね。それと同じで「何かを変えたい」と思ったらまずは自分が「決意」し「行動」すること。難しく考えず、まずは寝ぐせを直すくらい小さな一歩から踏み出してみてくださいね。

  
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