「勉強する子になってほしい」「学校で勉強についていけなくなったら困る」そんな思いでついつい「勉強しなさい」とお子さんに言っていませんか?今回は「お子さんが自分で勉強するようになる」ために親が出来る簡単な方法についてお話ししていきます。
目次
親が「しない」ススメ
「勉強しなさい!」は逆効果
2011年にベネッセ教育総合研究所が行った「第4回子育て生活基本調査(小中版)」の中で、子どもに「勉強しなさい」と声をかけた場合の子どもの学習時間の長さについてこんな調査結果が出ています。それは「勉強しなさい」と声をかけた子どもと、「勉強しなさい」と声をかけなかった子どもの学習時間に「大きな差がなかった」ということです。そして非常に興味深いのが、中学3年生の親御さんの回答では「勉強しなさい」と言われなかった子の方が20分以上長く勉強しているという結果が出ていることです。つまり「勉強しなさい」という言葉は逆効果にもなり得ると言えるのです。
「勉強しなさい」が逆効果な理由
人は誰しも「自分が正しい」と思っています。そして自分の間違いを人に指摘されたり、頭ごなしに指示されるのが嫌いです。親の「勉強しなさい」は「頭ごなしの指示」です。お子さんは「今はマンガを読んで、後30分したら勉強を始めよう」と思っていたかもしれません。するとお子さんは「自分が立てたスケジュールを否定された」「自分の自由を制限された」という気持ちになります。こうなると気持ちよく勉強、どころかイライラした気持ちを抱えながら「渋々」机に向かったり、あるいは「自分のスケジュールが正しい」「自分は自由である」ことを証明するために勉強しないことで親に対抗しようとしたりします。
人は自分で決めたい!
人に指示されると逆のことをしたくなるのは「自分が正しい」「自分は自由である」ということを証明したくなるからです。これは人として自然な感情であり、お子さんがきちんと成長している証拠。何も「わがままを言っている」「親を困らせようとしている」わけではありません。人は自分のことは自分で決めたいのです。そして人から言われたことには反発しますが、自分で決めたことはきちんとやることができます。例えば、お医者さんからどんなに「健康のために食生活を改善しなさい」と言われても出来なかった人が、ある日街中でショーウインドーに映る自分のお腹を見て「恥ずかしい」と自分で気づきダイエットを始めるように、どんな「指示」よりも相手を動かすのは「気づき」なんです。
親が子どもの勉強の計画を立てるのはありなのか?
「勉強しなさい!」と言わなくていいように親がいっしょに勉強の計画を立ててあげる方法もあるかもしれません。ただこれも注意が必要です。子どもが望んでいないのに「こうやるのはどう?」「一緒にがんばろう!」と計画を立ててしまうと、遠回しに「勉強しなさい」と言っているのと同じことだからです。「計画を立てる」のは「行動を決める」のと同じ。お子さんが受け入れる準備が出来ていないのに親が計画を立ててしまうと「親に行動を決められた」という反発心から、計画を守らない、渋々守るという状況になり、お子さんが「進んで勉強する」理想の状態にたどり着くことはできません。
だからこそ親が「しない」ススメ
だからこそ親が「『勉強しなさい』と言わない」「勉強の計画を立てない」ことをおススメしたいんです。親が「しない」勇気を持つことで、お子さんは自分で「する」と決めることが出来ます。親があれこれ指示してしまうのは「お子さんが自分自身で決断する機会」を奪うのと同じこと。指示ばかりしていると「指示されないと動けない子」になるか「指示に反発することで自分の存在価値を主張しようとする子」になってしまいます。勉強をするのはお子さんです。勉強して「よかった」と思うのも、勉強しないで後悔するのもお子さんです。「うちの子勉強しないで困ってるの」という親御さんの「言葉」は、親御さんがお子さんの問題を肩代わりしてしまっている状態です。勉強しないで困ってしまうのはお子さんですし、それを問題に感じるのはお子さんでなくてはなりません。「勉強することは自分にとって必要かもしれない」という「気づき」のきっかけを与えることこそが、実は親の本当の役割なんです。
子どもに教えるのは「勉強」ではなく「考え方」
勉強の必要性は自分で「気づく」もの
すると親御さんの中には「いかに勉強することが大切か」をお子さんに説明しようとする方がいらっしゃいます。「いい学校に行けばいい会社に入れて安定した給料がもらえて…」と説明されても、お子さんにとっては現実感がありません。なぜならあくまで「親の経験に基づいた思い」であって、お子さんがその思いに共感できなければ聞き流されてしまうからです。例えば野球が好きな人に「いかにサッカーが素晴らしいか」を伝えても、「そうか!これからは野球よりサッカーだ!」と思うことはまれでしょう。聞き流されてしまうだけならまだしも、「指示」と捉えられれば反発されてしまう可能性だってあります。では、どうやって気づいてもらったらいいのでしょうか?
「勉強の大切さ」を正しく伝える
人の脳は膨大な情報の中から「自分に必要な情報」だけを選別しています。全ての情報を処理しようとすると膨大なエネルギーを使い、人は一瞬で餓死してしまうくらいだと言われているんです。つまり「自分に必要な情報」だけを選んで省エネするように設計されているんですね。だからこそ、お子さんが必要だと思っている情報に関連付けて「勉強の大切さ」を伝えることで、お子さん自身に「そうか!勉強は自分にとって必要なことなんだ」と思ってもらうのが、正しい「気づかせ方」なんです。
お子さんの将来の夢は何ですか?
例えばお子さんが将来「人を助ける仕事がしたい」とお話ししてくれたとしましょう。これは親御さんにとっては大きなチャンスです!「どんなふうに助けてあげたいの?」「どんなことをしてあげたいの?」と優しく、丁寧に訊いてあげましょう。「病気の人を治してあげたい」「正義のヒーローみたいに悪いやつをやっつけたい」「困っている人のお話を聴いてあげたい」色んな助け方があると思います。例えば「病気の人を治してあげたい」であったら、さらにお子さんにこう尋ねます。「病気の人を治してあげるためには何が必要だと思う?」と。病気の人を治してあげるためには、「どんな病気があって」「どんな治し方があるか」を知らなくてはなりませんよね。お子さんに質問し、答えを聴いて一緒に考えることで、お子さんは「病気の人を治してあげるためには勉強しなくてはならい」ということに気づいてくれるかもしれません。この瞬間に「勉強すること」は「お子さんの夢を叶える手段」に変わるんです。
「勉強」は「夢を叶える手段」だと気づいてもらおう
「勉強」はそれ自体が重要だということではなく、お子さんの「大切な夢を叶える手段」であることに気づいてもらう。これが最も大切なポイントです。人が行動する理由は「快楽を得るため」「痛みを避けるため」の2つだと言われていますが、「夢を叶えてなりたい自分になる」ことがお子さんにとっての「快楽」だとすれば、その目的を達成するための手段である「勉強」は、「仕方なくやること」から「進んでやらなくてはならないこと」に変わります。取り組む動機が全く違うんです。取り組む動機が違えば、上達度合いに格段に差が出ます。例えば料理教室でも、友達の付き合いで何となく参加する場合と、「3か月後に結婚するので旦那さんに『ご飯が美味しい!』と毎日喜んでもらうために絶対に料理の基礎を習得したい!」と目的を持って参加する場合では、どちらがより多くのことを学べるかは想像できますよね。
「考え方」を伝えて気づいてもらおう!
「勉強の意義」そのものを伝えて理解してもらうよりも、「お子さんにとって何が必要か」という考え方を伝えて気づいてもらうことの方が、親御さんにとってもお子さんにとっても格段にストレスが少ないです。この「考え方」を伝える時に注意すべきは「質問すること」と「断定しないこと」。「人の病気を治すためにはお医者さんになるしかなくて、そのためには人の倍以上勉強しないといけないよ!」ではなく「病気で困っている人を助けてあげたいのであれば、例えばお医者さんが子どもの頃にどういうことをしていたかを調べてみるといい方法が見つかるかもしれないね」とあくまで選択肢の一つとして伝えてあげることが大切です。これにも「言葉」がとても重要な役割を果たすんですね。
まとめ
いかがでしたか?「勉強しなさい」と指示をするのではなく、お子さんが「なりたい自分になるために勉強は必要な手段かもしれない」と気づくお手伝いをすること。それが「お子さんが進んで勉強するようになる」簡単な方法です。それに欠かせないのは「正しい言葉」と「質問力」。今後この記事や勉強会で具体的な方法をお伝えしていきたいと思いますので、楽しみにしていてくださいね!