子どもの上手な叱り方!お子さんに「悪い子」と言っていませんか?

「子どものほめ方」以上に実はとても大切なのは「子どもの叱り方」です。「叱り方」を間違えてしまうと、お子さんが無気力になったり、チャレンジが出来ない子になったり、お子さんの大切な可能性を奪ってしまうことだってあり得ます。今回は「上手な叱り方」について「悪い子」という言葉をテーマにお話しします。

 

やってはいけない「悪い子」という叱り方

アンパンマンはバイキンマンに何て言う?

お子さんがいたずらをしたり、言うことを聞かなかった時、「悪い子」という「言葉」を使っていませんか。実はこれ、一番使ってはいけない「言葉」なんです。

小さいお子さんが大好きな「アンパンマン」。永遠のライバルであるバイキンマンが人を困らせている時に、アンパンマンは何て言うか覚えていますか。「やめるんだ!バイキンマン」つまり「悪いことはやめるんだ」「いたずらはやめるんだ」とバイキンマンを制します。アンパンマンがバイキンマンを「悪者」呼ばわりしているのを見たことがないですよね。アンパンマンは「悪いことをしている」からバイキンマンを止めるのであり、決してバイキンマンの存在そのものが悪だと思っていません。

「悪い子」という「言葉」はお子さんの存在が「悪い」と言っているのと同じです。本来なら「悪いこと」をしたから叱られるべきであるのに、「悪い子」だから叱られるとお子さんが勘違いする可能性があります。親としては小さいお子さんに分かりやすく「悪い子」と伝えることでやめてもらおうと思うのかもしれませんが、それは逆効果なんです。

 

「悪い子」はお子さんに「役割」を与えることである!

言葉には力があります。言葉は心を支配します。「悪い子」と言われ続けると、お子さんは「自分は本当に悪い子なのではないか」と疑問を抱くようになります。そして次第に「自分は『悪い子』なのだ」という確信を抱きます。これはお子さんに「『悪い子』という役割」を与えたのと同じことです。

こんな実験があります。アメリカのスタンフォード大学でボランティアの学生を看守役と囚人役に分け、実際の監獄に近い状態で過ごしてもらいました。すると次第に看守役は囚人役に対して強い態度を示すようになり、囚人役は不安や怒りを覚えるようになったのです。あくまで「模擬」であったにもかかわらず、学生たちは与えられた「役割」を感情・行動レベルで忠実に再現したと言われているのです。この結果は「自分は看守である」「自分は囚人である」という言葉と、その確信をより強くするような環境がつくりだしたものに他なりません。

 

人は「役割」を演じている!

この「監獄の実験」から分かることは、「人は役割を与えられるとそれを演じようとする」ことです。私たち自身も日常で「役割」を演じているんですよ。例えば、お子さんを叱ってイライラしていても、第三者からの電話や訪問に対してそれを見せることはありません。お母さんなら誰しもが経験することだと思いますが、電話だと声が高くなるあの感覚です。それは「お母さん」という「役割」と「人当たりのいいきちんとしている〇〇さん」という「役割」を瞬時に演じ分けていることに他ならないのです。

 

「悪い子」と言われ続けると本当に「悪い子」になる

それと同じで「悪い子」と言われ続けるとお子さんは「悪い子」として振舞うようになります。「言葉」と、お子さんを「悪い子」として扱う環境がその結果を創り出します。お子さんは「自分は悪い子だから何をしてもいい」と傍若無人に振舞うかもしれません。人を攻撃したり、もっと悪いことに自分を傷つけてしまうかもしれません。あるいは「自分は悪い子だから何をしても叱られる」と思えば、無気力で、チャレンジを恐れる子になるでしょう。表面的には従順な「いい子」に見えるかもしれませんが、それは「悪い子」である自分を隠そうとするがゆえ。そこにお子さんの「自由」はないのです。いずれもまるで「囚人役」のように、不安や怒りを感じる心の自由がない状態です。

 

「悪いこと」を丁寧に伝えることが「上手な叱り方」!

「悪い子」は親がさぼっている証拠

ではどうすればいいのでしょうか。私が思うに「悪い子」という言葉は親御さんが「伝えること」をさぼってしまっているように感じます。「悪い子」と叱ることはそれだけで抑止力になります。そしてどんな場面でも使える万能の言葉です。

子どもに「悪いこと」を理解してもらうには時間がかかります。例えばお友だちをぶってしまったとしましょう。「お友だちをぶつことが悪いことだ」と伝えるには「暴力をふるってはならない」「気持ちは言葉で伝えなくてはならない」「人を敬わなければならない」「自分がされて嫌なことを人にしてはいけない」など、たくさんのことを理解してもらわなくてはなりません。お子さんの発達段階に応じて理解できる内容が異なりますから、根気強く、何度も伝える必要があります。

「お友だちをぶつなんて悪い子!」と叱ればこの労力を掛けなくてすみます。でも親が「伝えること」をさぼってしまうと、先に述べたように子どもに「悪い子」の役割を与えてしまうのです。

 

「悪いことだ」と質問しながら伝えてあげよう

ですから上手な叱り方は「何が悪いことか」を伝えることだと言えます。頭ごなしに「叱る」必要はありません。ただ「これは悪いことだ」と「伝える」だけでいいのです。その時のポイントはお子さんに考えてもらうことです。

「お友だちをぶつのは『悪いこと』だとママは思っているのだけどなんでか分かるかな?」と。

質問されると人は答えざるを得なくなります。答えるために考えざるを得なくなります。一方的に何かを言われるよりも、自分で考えるというプロセスを経る方がお子さんは「自分事」として物事をとらえてくれます。

 

お子さんから出てきた答えを歓迎しよう

その上でお子さんが自分なりの答えを言ってくれたら「考えられたこと」をほめてあげてください。

「自分で考えられたね」とほめられると、人は聞く耳を持ちます。人は基本的に自分のことにしか興味がありません。自分にとって有益な情報、ここではお子さんの自尊心を高める「ほめる」という情報ですが、本当に伝えたいことを話す前に話を聴いてもらうための心のウォーミングアップをするのです。重要なのは「答えが合っているか」ではありませんので注意してください。大人は「答えが合っているか」に注目して「答えを正そう」としてしまいますが、ここでは「話を聴いてもらうためのウォーミングアップ」をしたいのです。もし「間違っているよ」と否定してしまうと、きっとお子さんは話を聴かなくなってしまうでしょう。否定の後に続くのは自分にとって良い情報ではないからです。

 

聴く準備が出来たら「なぜ悪いことか」を伝えよう

ここまで出来たらやっと「なぜ悪いことなのか」を伝えてあげることが出来ます。それも「決めつけ」ではなく「ママはこういう理由でこれは悪いことだと思っている」と伝えます。「これは悪いことなの!」では不十分です。お子さんにとって一番影響力を持つ親御さんがどう考えているかを伝えることが重要なのです。「世間一般が」「常識で」と言われてもお子さんは理解できません。

お子さんは親御さんの価値観や言動を真似します。一番身近な「モデル」だからです。だからこそ「親御さんが」どう考えているかを伝えることが大切なのです。

 

結論はお子さんに言わせよう

そして一番大切なのが「分かった?!」「もうやらないね!」などの「結論」を親御さんが言わないことです。なぜなら「人は自分が決めたことはやるけれど人に言われたことはしない」からです。「次に同じことがあったらどうすればいいと思う?」とお子さんに尋ね「もうやらない」という言葉を引き出す、つまりお子さん自身に「これは悪いことだからもうしない」と宣言させることが大切です。

それが上手な叱り方、すなわち「悪いことの伝え方」なのです。

 

 

叱るのはほめる以上に大変なこと

いかがでしたか?叱ることってすごく簡単なように見えて実はとても難しいことなんです。「ほめる」ことよりも難しいかもしれません。ですが頭ごなしに叱らずに、きちんと「伝える」ことが出来ると、お子さんが自分で出来るようになるだけではなく、「信頼感」が醸成されます。信頼している相手の話ならば聴こうと思いますよね。きちんと「信頼」を築くことが出来れば、もう「叱る」必要はなくなるんですよ。ぜひ今日からひとつずつ実践していってくださいね。

  
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